
ジェームズ・マクニール・ホイッスラーの有名(ポピュラー)な作品から、あまり知られていない作品までを厳選して紹介いたします。
灰色と黒のアレジメント - 母の肖像
ジェームズ・マクニール・ホイッスラーの代表作であり、一般的には「ホイッスラーズ・マザー」として知られています。
この作品は、ホイッスラーの母親であるアナ・マクニールを描いた肖像画で、彼女が椅子に座り、厳かで静かな表情をしている姿が特徴です。
母親の姿勢は堅実で、背景には簡素な灰色のカーテンがあり、人物の存在感を引き立てており、色調は全体的に穏やかな灰色と黒で構成され、光と影の微妙なコントラストが人物に深みを与えています。
この作品は、ホイッスラーが音楽的な視点を持ち込み、「アレジメント(編曲)」というタイトルで表現するように、芸術の中で感情や道徳を排除し、純粋に視覚的な調和を追求したことを示しています。
絵画の形式として、静かな静物的な美しさを持ちつつも、母親への深い尊敬と愛情が表現されています。

Date.Date.1871
白のシンフォニー第1番 - 白の少女
モデルはホイッスラーの恋人であり、後に彼の妻となるジョアンナ・ヒファーナンです。
この作品は、ホイッスラーが色彩と光の調和を探求し、人物を純粋でシンプルな形で表現した作品です。
少女は白いドレスを着て、背景も明るい白を基調にしており、人物と背景が一体化しているような印象を与え、絵画の色調における均衡と調和を強調し、視覚的な「シンフォニー」を作り上げました。
少女の姿勢は穏やかで優雅、表情には静かな集中が見て取れ、絵全体に静謐で調和の取れた雰囲気を生み出しています。
この作品は、ホイッスラーが絵画を音楽的な視点から捉え、感情表現を排除し、芸術の純粋な美しさを追求する姿勢を示しています。

Date.Date.1862
黒と金色のノクターン - 落下する花火
ジェームズ・マクニール・ホイッスラーによる印象的な夜景画で、花火が夜空に映る様子を描いています。
作品は、暗い夜空に金色の花火が落ちる瞬間を捉えており、ホイッスラー特有の色彩の調和と光の表現が際立っています。
花火の輝きは、金色や黄色を使って繊細に描かれ、暗い背景とのコントラストによってその美しさが強調されています。
ホイッスラーは音楽的なアプローチを取り入れ、絵画においても「ノクターン(夜想曲)」というタイトルを用い、静けさと優雅さを感じさせる情景を作り出しています。
花火の一瞬の輝きとそれに続く落ちる動きが、静かな夜の中で瞬間的に広がる美を象徴しており、感情や物語性よりも色と光の抽象的な美を重視した作品です。

Date.Date.1875
陶磁の国の姫君
東洋趣味(ジャポニスム)の影響を受けて制作した作品で、モデルはジョアンナ・ヒファーナンです。
白い陶磁器のような肌と東洋風の衣装をまとった女性が、青と白の磁器や装飾的な背景とともに描かれており、画面全体が洗練された装飾性と静謐な美しさに包まれています。
ホイッスラーはこの作品で、日本や中国の美術に影響を受けた構図や色彩、モチーフを取り入れ、西洋絵画と東洋美術の融合を試みました。
絵画の構成は平面的で装飾的な要素が強く、人物と背景が一体となって視覚的な調和を生み出しており、感情表現よりも形式と美の追求に重きを置いた作品です。

Date.Date.1863–1865
白のシンフォニー第2番:小さな白の少女
色彩の調和を追求したシリーズの一作で、白いドレスを着た少女が静かに立つ姿を描いた作品です。
モデルは当時の知人の娘ともされ、純白の衣装、青白い背景、柔らかな光の中に描かれた少女の姿は、静謐で繊細な印象を与えます。
ホイッスラーはこの作品でも物語性や感情を排し、絵画全体を一つの「音楽的調和」として構成しており、タイトルに「シンフォニー」とある通り、視覚的に音楽のようなバランスとリズムを意識しています。
少女の姿勢や表情は控えめで内省的であり、純粋な白の中にわずかな色彩の差異を用いて深みと静けさを表現した、形式美を追求した作品です。

Date.Date.1864
白のシンフォニー No.3
「白のシンフォニー」シリーズの最終作で、白い衣装をまとった2人の女性が静かな室内に佇む姿を描いています。
モデルはジョアンナ・ヒファーナンとその姉とされ、画面全体は白を基調に抑制された色調で統一され、空間には柔らかな光と繊細な陰影が漂います。
ホイッスラーは人物と背景、衣装や小道具に至るまでの色彩の調和を重視し、物語や感情の描写ではなく、視覚的な美しさと構成のバランスを追求しました。
音楽的なタイトルに込められた通り、画面は静けさと洗練されたリズムを持ち、純粋な形式美と抽象的な感覚の融合が特徴です。
