ジャン・オノレ・フラゴナールの作品一覧・解説『ぶらんこ』、『閂(かんぬき)』

ジャン・オノレ・フラゴナールの有名(ポピュラー)な作品から、あまり知られていない作品までを厳選して紹介いたします。

ぶらんこ

ロココ美術を代表する作品であり、愛と官能、遊戯性に満ちた貴族社会の享楽的な雰囲気を象徴しています。
画面中央では、ピンク色のドレスを着た若い女性が豪華な庭園でブランコに乗り、軽やかに宙を舞っています。
彼女の靴が脱げ、足元がめくれる瞬間が描かれており、その下方には茂みから覗く若い恋人が彼女を見上げています。
一方、ブランコを背後から押している年配の男性は状況に気づいていない様子で、女性と若者の密かな関係を暗示する構図となっています。
柔らかな光、豊かな緑、流麗な筆致と色彩によって、夢幻的で甘美な空気が画面全体に広がっており、ロココ様式の軽快さと享楽性の極致を体現した作品です。

ぶらんこ
Date.1767

閂(かんぬき)

官能と緊張感が共存するロココ後期の作品であり、愛の情熱を劇的に描いています。
画面では、男性が扉の閂をかけながら、若い女性を強く抱き寄せており、女性は半ば身を反らせて抵抗するような姿勢を見せていますが、完全な拒絶ではなく、曖昧な感情の揺らぎが表現されています。
ベッドの赤いカーテンや乱れたシーツ、倒れた花瓶などが性的な高揚と緊迫した瞬間を象徴しており、愛欲の頂点にある密室の物語が描かれており、絵の構図は動きと対角線を活かして視線を誘導し、陰影の対比によって劇的効果を高めています。
ルイ16世時代の官能美を代表するこの作品は、単なる恋愛画ではなく、人間の欲望とその危うさを鋭く視覚化した傑作です。

閂
Date.1779

読書する娘

ロココ美術の中でも異色の静けさと内省を湛えた作品です。
黄色いドレスを身にまとった若い女性が、柔らかな光に包まれながら本に夢中になっている姿が描かれており、背景には装飾的要素を排した単純な壁が配され、鑑賞者の視線は自然と彼女の表情と仕草に集中します。
官能性や遊戯性の強い他のフラゴナール作品とは対照的に、この絵は個人の知性や感情、読書という行為の没入感を繊細に表現しています。
豊かな質感や光の扱いにより、人物の存在感が際立ち、18世紀フランス社会における女性の知的関心へのまなざしをも感じさせる優雅な名品です。

読書する娘
Date.1776

盗まれた接吻

ロココ美術特有の甘美さと緊張感が織り交ぜられた作品です。
画面には、若い女性が部屋を出ようとする瞬間、背後から恋人に引き留められ、思いがけず接吻を奪われる場面が描かれています。
女性は戸惑いながらも完全に拒絶はしておらず、その表情と身振りに愛とためらいの微妙な心理が表れており、豪奢な衣装や室内装飾は18世紀フランス上流階級の私的空間を示し、こっそりと交わされる恋愛の緊張感が濃密に表現されています。
柔らかな光と繊細な筆致により、秘密めいた情景に優雅さと生々しさが同居しており、フラゴナールの叙情的かつ巧緻な表現力が際立つ一作です。

盗まれた接吻
Date.1787

愛の進捗: 出会い

ルイ15世の公妾デュ・バリー夫人のために制作された連作の一部であり、恋愛の過程を理想化して描いた作品です。
この場面では、若い恋人たちが初めて出会う瞬間が、優美な庭園を背景にして描かれています。
男性は情熱的な面持ちで女性に近づき、女性は恥じらいながらも応えるような姿勢を見せており、恋の芽生えと期待が繊細に表現されています。
柔らかな色彩と流麗な筆致、優雅な構図は、ロココ美術の甘美な世界観を体現しており、愛の感情が自然と調和する理想の恋愛劇として仕上げられています。

愛の進捗 出会い
Date.1773