エドガー・ドガの有名(ポピュラー)な作品から、あまり知られていない作品までを厳選して紹介いたします。
アブサン
パリのカフェでアブサンを飲む女性と男性を描いた作品です。
テーブルに座る女性は憂鬱な表情で、飲み物を前に孤独感や虚無感が漂っています。一方、隣の男性は体をそらし、無関心そうに見えます。全体の構図と色彩は陰鬱な雰囲気を強調しており、当時のパリのカフェ文化やアルコールの問題を象徴しています。
この絵は当初、堕落的であると批判されましたが、現在では時代の社会的背景を映した名作として評価されています。
Date.Date.1875-1876
ベレッリ一家
画家の叔母であるローラ・ベレッリ、その夫ジエン・ベレッリ、2人の娘を描いた作品です。
家族が一つの部屋に集まっているものの、互いに距離があり、緊張感や疎外感が漂う構図が特徴です。ドガの卓越した描写力で家具や衣装が細密に描かれる一方、登場人物の心理的な隔たりが画面に強く反映されています。
家族の複雑な関係や感情を巧みに表現した作品として知られています。
Date.Date.1858-1867
ニューオーリンズの綿花取引所
ドガがアメリカ南部を訪問中に制作しました。
彼の親戚が経営するニューオーリンズの綿花取引所を題材とし、取引所内の活気ある日常を写実的かつ細部にわたり描写しています。画面中央には新聞を読む男性が配置され、周囲では綿花の検査や商談を行う人々が見られます。冷静で構成の整ったこの作品は、ドガが得意とする観察力と空間表現を示しており、彼の印象派以前の作風を代表する作品です。
市井の生活を記録したこの絵は、1878年のパリ万国博覧会で展示され、高い評価を受けました。
Date.Date.1873
バレエのレッスン(ダンスクラス/バレエクラス)
「La classe de danse(ダンスクラス)」と「The Ballet Class(バレエクラス)」といったどちらもスタジオの設定でバレエダンサーを描いていますが、テーマや構図に違いがあります。
また、1 つは油彩画で、もう 1 つはパステル画で描かれています。
La classe de danse(ダンスクラス)
この作品では、エドガー・ドガが若いバレエダンサーたちが有名なバレエの指導者ジュール・ペロによって教えられているバレエのレッスンを描いています。
焦点はバレエのトレーニングの構造と規律にあり、生徒たちはポジションの練習をし、教師から指導を受けています。構図は教師と生徒との関係に重点を置き、彼らの訓練がプロフェッショナルであることを強調しています。
このシーンは動的で、教師が指導する場面が捉えられ、ダンサーたちは学習の異なる段階で描かれています。
この作品はパステル画で描かれています。
Date.Date.1874
The Ballet Class(バレエクラス)
内容は似ていますが、「The Ballet Class」はダンサーたちの練習とバレエのより形式的で学問的な側面を強調しています。
この作品では、教師とのやり取りにあまり重点を置かず、ダンサーたちが動きを通して取るポーズや身体の形に焦点を当てています。このシーンはより親密で、ダンサーたちの優雅で優美な動きを伝統的なバレエの舞台で見せています。
この作品は油彩画で描かれています。
Date.Date.1874
どちらの作品もバレエの微妙なニュアンスを捉えようとするドガの関心を示していますが、「La classe de danse」はバレエクラス全体の広い視点を提示し、教師の役割を描いているのに対し、「The Ballet Class」はダンサーたちの規律や訓練中の優美な形に焦点を当てています。
エトワール(星)
舞台上のスター・ダンサー(エトワール)の瞬間を切り取っています。
画面中央の女性ダンサーは優雅なポーズで描かれ、光が当たる衣装や肌の質感が繊細に表現されています。一方で、背景には薄暗くぼんやりと他のダンサーや舞台の影が見え、舞台上の華やかさとその裏にある孤独や緊張感を対比的に表現しています。ドガは大胆な構図や光の扱いを通じて、バレエの儚い美しさと瞬間の輝きを際立たせています。
ドガの革新的な視点とバレエへの深い情熱を示すものとして評価されています。
Date.Date.1870
舞台の踊り子たち
舞台上で踊るバレエダンサーたちを描いたものです。
踊り子たちがグループでパフォーマンスをする様子が描かれ、彼女たちの衣装や動きが光と色彩の美しい調和の中で表現されています。画面の奥行きや視点の斜めの構成は観客席から見たような感覚を与え、現場の臨場感を強調しています。ドガはバレエの優雅さだけでなく、動きやリハーサルの裏側にある努力を感じさせる作品を多く描いており、この作品もその一つとして評価されています。
繊細な筆遣いと大胆な構図が、彼の独自の視点を際立たせています。
Date.Date.1870
アイロンをかける女たち
家庭内での女性の労働をテーマにしています。
アイロンをかける女性たちが描かれ、彼女たちの動作や姿勢に焦点を当てています。ドガは、日常的な作業を繊細かつ詳細に描写し、人物の表情や衣服の質感、光と影の使い方に特に注力しています。作品は、バレエなどの華やかな舞台とは対照的に、女性たちが行う地味で単調な労働の美しさと重要性を描き出しています。
ドガの独自の視点と細部へのこだわりが、平凡な瞬間に深い意味を与えています。
Date.Date.1880
婦人帽子店
パリの帽子店の内部を描いたものです。
この絵では、店の中で帽子を選ぶ女性たちや、それを手に取る店員の姿が描かれています。ドガは、女性たちが帽子を試着するシーンをリアルに捉え、当時のパリの流行やファッションの雰囲気を反映しています。作品の構図は、店内の空間に動きを与え、視線の方向や人物の配置に注意を払いながら、観客に対して独特の視覚的体験を提供しています。ドガは光と影を巧みに使い、室内の温かみや、女性たちの衣服や帽子の質感を際立たせています。
日常の風景を切り取りながらも、ドガ独自の芸術的感覚と人物描写が強く表れています。
Date.Date.1879-1882
舞踏会でのディナー
1870年代後半に制作された作品で、パリのオルセー宮殿で開かれる舞踏会の一シーンを描いています。
この絵では、舞踏会の華やかな雰囲気の中で踊る男女の姿が描かれ、ドガ独特の視点からその動きや衣装のディテールが細かく表現されています。特に、舞踏会の参加者たちが広い空間で交わる瞬間に焦点を当て、観客には踊る姿勢やポーズの変化が強調されています。また、ドガは舞踏会の空間の中での光と影の使い方や、人物の位置取りにこだわり、絵全体に動きとリズムを与えています。
ドガが舞踏会の社交的な側面を写実的に描きながら、彼のバレエ作品にも共通する動きや表現の美しさを追求した一例です。