エドゥアール・マネの作品一覧・解説『オランピア』、『草上の昼食』

エドゥアール・マネの有名(ポピュラー)な作品から、あまり知られていない作品までを厳選して紹介いたします。

笛を吹く少年

フランス軍の制服を着た若い少年がフルートを吹く姿を描いた作品です。
少年は中央に立ち、背景は単純な無地の暗色で構成されており、視覚的に彼の姿が際立つようになっています。
この作品は、日本の浮世絵の影響を受けたと言われ、平面的で輪郭のはっきりしたスタイルが特徴です。
マネは伝統的な立体感を抑え、強い色彩と明確な形で人物を表現しており、当時の美術界では革新的と見なされました。
シンプルながらも印象的な構図で、少年の凛々しさと無垢さを引き立てています。
作品はサロンに出展されましたが、伝統的な絵画とは異なるため当初は批判を受けましたが、それでも「笛を吹く少年」は、マネの独創性とモダンなスタイルを象徴する代表作の一つとなっています。

笛を吹く少年(The Fifer)
Date.1866

オランピア

当時の美術界に大きな衝撃を与えました。
絵には、ベッドに横たわる裸の女性オランピアが描かれており、彼女は観る者に直接視線を向けています。
この構図は、従来の理想化された裸体画とは異なり、オランピアは自信に満ち、挑発的で、現実的な女性像として表現されていおり、彼女の足元には黒い猫が描かれ、性的な暗示を含むものと解釈されました。
また、背景には召使いが花束を持って立っており、これもオランピアが高級娼婦であることを示唆しています。
この作品は、ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」など古典的なヴィーナス像へのパロディとも考えられており、当時の保守的な芸術観に対する挑戦として見られました。そのため、発表当初は批判を浴びましたが、後に近代美術の先駆的作品と評価されました。

オランピア(Olympia)
Date.1863

バルコニー

バルコニーに立つ3人の人物を描いた作品です。画面中央には白いドレスを着たベルト・モリゾが座り、彼女の横にはジャンヌ・デュヴァルとアントニオ・デ・ラ・ガンダラが立っています。
彼らの背景には黒い影が広がり、前景の明るい色彩と対照的です。
この絵は、フランシスコ・ゴヤの「マハと二人の男」からインスピレーションを受けており、伝統的な肖像画の形式をモダンに再解釈しています。
バルコニーの手すりや花のディテールが強調され、人物たちの間に微妙な距離感が表現されています。
マネは光と影のコントラストを巧みに使い、日常の風景を静かで詩的な空間として描いていますが、発表当初はその構図の斬新さが批判を浴びました。

バルコニー(The Balcony)
Date.1868-1869

草上の昼食

森の中でピクニックを楽しむ2人の服を着た男性と裸の女性を描いた作品です。
背景にはもう一人の着衣の女性が川で水浴びをしています。
中央の裸の女性が直接観る者に視線を投げかけ、堂々とした姿が当時の観衆を驚かせました。
この構図は、古代美術の神話的な場面を現代的に再解釈したもので、伝統的な理想化された裸体画とは異なり、リアルな人物像が描かれています。
この作品はサロン・デ・レフュゼで展示され、激しい批判を浴びましたが、後にモダンアートの先駆けと評価されました。
光と影のコントラスト、空間の不思議な奥行きが特徴で、日常生活のテーマと古典的な様式の融合を図った作品です。

草上の昼食(Le Dejeuner sur l'herbe)
Date.1863

フォリー・ベルジェールのバー

パリの有名なキャバレー「フォリー・ベルジェール」を舞台にしています。
絵の中心には、バーのカウンターの後ろに立つ無表情な女性が描かれています。
彼女は客と向き合っているように見えますが、背後の鏡には彼女の後ろ姿と客の姿が映し出されており、視覚的な矛盾が生じています。
この構図は現実と鏡像の関係を複雑にし、観る者に空間や視点のズレを感じさせま、カウンターにはシャンパンや果物、花などが並び、パリの社交的で華やかな雰囲気を表現しています。
マネの作品は当時の都市生活や孤独感、社会的な役割の問題を反映しており、この絵もそうしたテーマを暗示しています。

フォリー・ベルジェールのバー(A Bar at the Folies-Bergere)
Date.1882

ジョージ・ムーアの肖像

アイルランド出身の作家ジョージ・ムーアを描いた作品です。
ムーアは当時パリで活動しており、印象派や象徴主義に影響を受けた人物です。絵では、ムーアが椅子に座り、リラックスしたポーズで横向きに描かれています。彼の落ち着いた表情やダークカラーのスーツは、知性と洗練を感じさせる一方で、背景はシンプルで人物に焦点が当たっています。
この肖像画は、ムーアとマネの個人的な親交を反映しており、マネの描写技法が洗練された時期の作品とされています。

ジョージ・ムーアの肖像(Portrait of George Moore)
Date.1879

ヴィクトリーヌ・ムーランの肖像

マネのモデルであり、また「草上の昼食」にも登場する裸の女性、ヴィクトリーヌ・ムーランを描いた肖像画です。
ムーランは当時のパリで有名なモデルで、絵では彼女が華やかな赤いドレスを着て、中央に座っている姿が描かれています。
彼女の姿勢や表情は自信に満ち、堂々とした印象を与えます。背景にはシンプルな暗い色調が使われ、ムーランの存在感を際立たせています。
この肖像は、マネのモデルとしてのムーランの重要性を示すとともに、彼の肖像画技術の成熟を反映しています。

ヴィクトリーヌ・ムーランの肖像(Portrait-of-Victorine-Meurent)
Date.1876