エドヴァルド・ムンクの作品一覧・解説『叫び』『キス』

エドヴァルド・ムンクの有名(ポピュラー)な作品から、あまり知られていない作品までを厳選して紹介いたします。

叫び

絶望や恐怖を象徴する人物がオレンジ色の空を背景にして、両手で顔を覆いながら叫んでいるシーンを描いています。
ムンクはこの絵を自らの精神的な苦悩を表現するために描いたと言われ、特に「叫び」は孤独、無力感、内面的な不安を象徴するイメージとして解釈されています。
背景の歪んだ風景や、空に広がる不安定な色彩は、登場人物の感情の高まりを強調し、観る者に強い印象を与えます。
この作品は、19世紀末の象徴主義や表現主義運動における重要な位置を占め、後の芸術に大きな影響を与えました。

Date.1893

病める子

初期の代表作の一つです。
ムンクの姉マルテの死を描いたもので、病気に苦しむ少女の姿が中心に描かれています。
少女は寝かされたベッドに横たわり、その周りに家族と思われる人物たちが立っています。
ムンクは、死や病気に対する深い感情的な反応を表現しており、背景は淡い色合いで描かれている一方、登場人物たちの顔には悲しみや憂いが漂っています。
この作品は、ムンクが生きた時代の死生観や、彼の個人的な経験から生まれた感情が強く反映されており、死を迎える無力感や哀しみを深く感じさせます。

病める子
Date.1885-1886

吸血鬼

人間関係における恐怖や支配、欲望をテーマにしています。
女性が男性の肩に顔を埋め、彼の首元に口を近づけている姿が描かれています。
この女性は吸血鬼のように描かれ、男性はその影響下にあるように見えますが、彼の表情は苦しんでいるように感じられます。
背景は暗い色合いで、感情的な緊張感を強調し、愛や欲望が持つ支配的な力、そしてそれが引き起こす苦悩や恐怖を表現したとされています。
作品全体に漂う不安と抑圧された感情が、当時の社会や人々の関係性に対するムンクの鋭い洞察を感じさせます。

吸血鬼
Date.1895

不安

内面的な恐怖や不安感を表現しています。
この絵では、荒れた海の上を歩く人物たちが描かれ、その前景には不安げな表情をした人々が並んでおり、彼らの後ろには赤く染まった空が広がり、まるでその感情が空全体に影響を与えているかのようです。
人物たちの顔には恐怖や無力感が浮かび、周囲の荒れた自然と相まって、精神的な混乱と絶望感が強調されています。
「叫び」とどこか似たような雰囲気で精神的な澱みを表現していますが、表情は180度違うところが面白いです。(「叫び」の約1年後に制作)

不安
Date.1894-1896

マドンナ

宗教的なテーマと人間の性や愛に対するムンクの独自のアプローチが特徴です。
彼女は聖母マリアを模した姿で、顔に妖艶かつ神秘的な表情を浮かべています。
しかし、神聖な聖母マリアとは裏腹にムンクは伝統的な宗教的な象徴から逸脱し、女性の裸体や性的な要素を強調することで、愛と性の二重性を表現しています。
背景には赤や青の淀みのある色が使われ、女性の神聖さと欲望が交錯する感覚を生み出しています。
作品は、愛と肉体、精神性と肉欲の境界を曖昧にし、人間の複雑な感情と欲望を探求しています。

マドンナ
Date.1894

人間関係の終焉と愛の消失をテーマにしています。
この絵では、服がはだけた女性と男性が描かれ、二人は身体的に近くにいますが、表情や姿勢には疎遠さや冷たさが感じられます。
男性は背を向け、女性は無力な様子でその背後に立っています。
背景には、灰色の色調が支配的で、愛や情熱が枯れ果てた様子を象徴しています。
ムンクはこの作品を通じて、愛情が衰退し、関係が冷え切る過程を表現し、孤独や失望感を強く訴えかけています。

灰
Date.1894

嫉妬

感情の激しさと人間関係の不安定さをテーマにしています。
この絵では、女性の顔が怒りや不安で歪んでおり、その目は鋭く見つめる先にある男性を見つめています。
男性は別の女性と親密にしているように描かれ、女性の心の中にある嫉妬と所有欲が強調されています。
嫉妬が引き起こす痛みや狂気、そして愛の持つ破壊的な力を描き、感情の緊張感が視覚的に表現されています。

嫉妬
Date.1895

キス

愛と情熱をテーマにした作品です。
この絵では、二人の人物が密接に抱き合い、キスを交わしている姿が描かれています。
二人の顔や体はほとんど溶け合うように描かれ、個々の特徴が曖昧になり、まるで一体となっているかのようです。
背景は暗い色調で、愛の瞬間を強調するために静謐さを保ちつつも、人物たちの強い情熱を引き立てています。
愛情の深さと、それが時に人を一体化させる力を表現しており、物理的な接触が精神的な結びつきや融合を象徴しています。

キス
Date.1897

別離

愛情の終焉や人間関係の断絶をテーマにしています。
この絵では、男女が別れの瞬間に描かれ、男性は悲しげな表情で女性の手を握り、女性は背を向けて離れていこうとしている姿が描かれています。
背景は暗く、色調も冷たく、感情的な疎遠さが強調されています。
ムンクはこの作品を通じて、愛の喪失や切なさ、そして関係の崩壊が引き起こす孤独感を表現しており、別れの瞬間に感じる心の痛みを鋭く捉えています。

別離
Date.1896

病室での死

死と病に対する彼の個人的な関わりを描いたものです。
この絵は、ムンクの姉マルテの死を受けて描かれたもので、病室での死の瞬間を表現しています。
病床に横たわる女性(彼の姉)を中心に、周囲には家族や親しい人々が集まっていますが、彼らの顔には悲しみや恐れが浮かんでおり、死の不可避性を感じさせます。
背景には暗く沈んだ色調が使われ、死というテーマの深刻さが強調されています。ムンクは、この作品を通じて死の存在とその影響、そして死に対する人々の感情的な反応を探求しています。

病室での死
Date.1893