
レオナルド・ダ・ヴィンチの有名(ポピュラー)な作品から、あまり知られていない作品までを厳選して紹介いたします。
モナ・リザ
レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」は、世界で最も有名な絵画の一つで、ルネサンス絵画の到達点とされる肖像画です。
モデルはフィレンツェの絹商人フランチェスコ・デル・ジョコンドの妻、リザ・ゲラルディーニと考えられており、作品名の「モナ」は「マドンナ(貴婦人)」の略称に由来します。
本作は依頼主に引き渡されることなく、レオナルド自身が晩年まで手元に置き続けた点でも特異な作品です。
構図は半身像で、人物を正面に近い三分の四正面で捉え、鑑賞者と視線が交錯するよう設計されています。
この直接的な視線と、微妙に変化して見える微笑が、鑑賞者に強い心理的な関与を促します。
背景には実在しない幻想的な山岳風景が広がり、人物と自然が連続するように配置されることで、人間を自然の一部として捉えるレオナルドの思想が反映されています。
技法面で最も重要なのがスフマートで、輪郭線を曖昧にし、薄い絵具を幾層にも重ねることで、煙のように柔らかな陰影を生み出しており、表情や肌は固定された形ではなく、光の加減によって変化する生きた存在として感じられます。
また、手の描写には解剖学的知識に基づく正確さと、滑らかな量感表現が見られ、精神性と肉体性の調和が追求されています。

Date.1503-1506
最後の晩餐
ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院食堂の壁画として、当時ミラノ公であったルドヴィーコ・スフォルツァの依頼により描かれました。
主題は新約聖書に基づき、キリストが「あなたがたの中の一人が私を裏切る」と告げた直後の瞬間で、弟子たちの驚き、動揺、疑念が一斉に噴き出す劇的な場面が選ばれています。
構図は厳密な一点透視図法に基づき、すべての消失点がキリストの頭部に集約されることで、視線と意味の中心が明確に示されています。
弟子たちは三人ずつ四つのグループに分けられ、それぞれが異なる心理状態を示す身振りや表情を見せ、個々の性格と感情が明確に描き分けられています。
技法面で特筆すべきは、伝統的なフレスコではなく、テンペラと油彩を壁に直接重ねる実験的手法が用いられた点で、これにより細密な陰影や繊細な表情表現が可能になりましたが、同時に絵具の定着が弱く、完成後まもなく剥落が始まる原因ともなりました。
光と明暗の操作によって空間には深みが与えられ、キリストの静かな姿勢と弟子たちの激しい動きとの対比が、精神的緊張を際立たせています。
物語性、科学的遠近法、心理描写を高度に統合した作品であり、宗教画を単なる象徴表現から人間ドラマへと引き上げた、ルネサンス絵画史上の画期的傑作です。

Date.1495-1498
ヴィットルヴィアン人
有名な素描で、人体の比例と調和を示しています。
描かれたのは裸の男性で、同時に円と正方形に内接するようなポーズをとっています。この作品は古代ローマの建築家ヴィトルウィウス(Vitruvius)の著作に基づいており、人体の比例に関する理論を表現しています。
円は手の先から手の先、足の先から足の先までの円周を示し、正方形は手の先から足の先までの高さと幅を表しています。この素描は人体の調和と完璧な比例を表現するダ・ヴィンチの観察力と芸術的才能を示す傑作として、広く称賛されています。

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聖アンの聖母
聖アン(キリストの祖母)と聖母マリア、そして幼子イエス・キリストを描いた作品です。
聖アンは左に座り、彼女の膝に幼いマリアがおり、マリアもまたイエスを抱いています。この作品は三世代が描かれた珍しい構図で、それぞれの人物像が繊細な仕草や表情で表現されています。
ダ・ヴィンチはこの絵画で、神聖な母性や家族の結びつきを優雅に描写し、その緻密な観察と独創的な表現力を示しています。

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マドンナ・ルキニャーノ
マリアと幼子イエスを描いた絵画です。
マリアが幼子を抱いた姿が描かれており、背後に女性が見える構図です。この絵画はダ・ヴィンチの制作とされていますが、正確な制作年や制作者については諸説があり、サンクトペテルブルクのヘルミタージュ美術館に収蔵されています。
静かで優美な雰囲気と、人物像の微妙な表情が特徴であり、ダ・ヴィンチの独創的な描写が見られます。

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聖母子と聖アン
聖アン、幼子イエス、およびマリアを描いた作品です。
この絵画は、聖アンがマリアと幼子イエスを優しく見つめる構図で描かれています。ダ・ヴィンチの特徴である微妙な表情や緻密なディテールがこの作品にも見られ、聖アンの柔らかい視線と人物たちの親密な雰囲気が特徴です。
現在はサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に所蔵されています。

聖ヨハネ
聖ヨハネを描いた絵画です。
この絵画では、聖ヨハネが特徴的なポーズで描かれており、右手をキリストに向け、彼を指し示すような仕草をしています。この作品は、モナ・リザなどと同様にダ・ヴィンチの特徴である微妙な表情や精緻なディテールが見られ、聖ヨハネの柔らかな視線が印象的です。
現在はパリのルーヴル美術館に収蔵されています。

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サルヴァトール・ムンディ
祝福を与える救世主イエス・キリストを正面像で描いた宗教画です。
右手は祝福のジェスチャーを示し、左手には宇宙を象徴する水晶の球体を持たせることで、キリストを万物の支配者として表しています。
顔や手にスフマートが用いられ、輪郭を曖昧にする柔らかな陰影が精神的な深みを生み出しています。
特に視線は鑑賞者を静かに捉え、内省的で超越的な存在感を放ちます。
水晶球は屈折や歪みを最小限に抑えて描かれており、これは自然観察と光学への深い理解を踏まえつつ、神性を強調するために意図的な簡略化が施された可能性を示します。
衣文の描写には緻密な層状の絵具と明暗対比が用いられ、立体感と威厳が両立されています。







